一人暮らし初日にうんこもらした話

2017年3月26日。初めて新居・梅ヶ丘にたどり着いた当時18歳の俺は、路上で一人うんこを漏らした。

 

比喩ではなく、マジで漏らした。小学校二年生のときに、自宅の階段で漏らして、なぜかそのまま登校して、保健室で着替えた時以来のお漏らしだった。

 

特段括約筋が緩いというわけではなかった。高校時代、自宅から高校へ向かうバスは一時間に一本しかなかった。だから、どんなに腹が悲鳴を上げていようと、校門にたどり着くまで俺の肛門は鉄門と化して、生半可な受験生は通さぬ最難関肛ぶりを見せていたのだった。事実、高校在学中は一回も第一志望は譲らず、社会的死亡に陥ることはなかった。

 

転居の三日前に食べた焼肉が中ったことが原因だった。自宅で安静にしなければならないところだったが、しかし転居日は決まっていたので、顔は青本、頭は白本、腹の危険信号は赤本のまま飛行機に搭乗せざるを得なかった。この間肛門が鉄壁を保っていたことだけが幸いだった。

 

数時間のフライトと移動を耐え抜いて梅ヶ丘駅に着き、一種の安堵感が生まれた。これが命取りであった。鉄門の易化である。ここ数時間の難化を経験した液化受験生は、これを見逃してはくれなかった。ああ、なんでお前が東大に。地方公立肛からとうとう理三が出てしまった。距離にして新居から150m地点での出来事だった。

 

冬も終わらぬ三月末の空に冷やされた、何もない部屋の真ん中で、ノーパンの18歳男性がうずくまっている。これが、俺の、東京での最初の、一人暮らしの最初の、思い出であった。